内心の自由を奪う共謀罪法案の廃案を求めるアピール

内心の自由を奪う共謀罪法案の廃案を求めるアピール

3月21日、政府は「組織犯罪処罰法改正案」を閣議決定して国会に上程した。計2777件に及ぶ犯罪について、計画しただけで処罰するという同法案は、国民の思想や内心にまで踏み込んでこれを取り締まり処罰するという点で、かつて国会で3回廃案になった「共謀罪」の再提案であり、国民の自由と民主主義の観点から重大な問題をはらんでいると言わざるをえない。

犯罪の処罰は、実行された行為を罰するのが法の原則であり、例外として重罪には未遂罪が規定され、さらに外患誘致や内乱、殺人など特に重大な犯罪についてのみ準備行為も罰する規定があるのが現行法の体系である。今回上程された法案は、広範な犯罪について、未遂や予備ですらない計画・謀議の段階でこれを罪として罰するとしている。そしてそれらの多くは現行法では未遂でさえ罪とはならないものであり、法の体系を覆して、国民への監視、取り締まりを強化するものとなっている。しかもこの中には著作権法違反など、テロや組織犯罪とどのように関連するのか疑問を抱かざるをえないものも多く含まれている。

政府は、この法律は組織的犯罪集団のみに適用され、一般市民に及ぶ恐れはないと説明しているが、どの団体を犯罪集団とみなすかは、時の政権や警察が恣意的に判断するもので、市民団体や労働組合などが「犯罪集団」と決めつけられる可能性は排除されない。原発や基地に対する妨害行為はこの法案では共謀罪の対象であり、これにより、原発や基地への抗議行動を行う団体を警察が捜査し、取り締まり、構成員を逮捕し投獄することが可能になる。

さらに、共謀罪を適用し立件するためには共謀の証拠を蒐集する必要があり、そのために捜査当局は盗聴や密告などの手法を常用するようになる。まさに現代の治安維持法である。

それらは国民の自由を拘束し、言論・出版を萎縮させるのは明白である。

自由な言論と出版活動が保障されるのが民主主義の基本であり、図書館の活動もそれを基本としている。図書館はこの法案の関連資料を幅広く蒐集して、国民の判断材料として提供するように努めなければならない。

共謀罪は、国民の内心の自由及び図書館の自由を奪うものであり、私たち図書館九条の会はこれに反対し、同法案を廃案とするよう、強く要求するものである。

2017年4月 図書館九条の会

■内心の自由を奪う共謀罪法案の廃案を求めるアピール(PDF)